生産設備で広く使われている金属材質として「鉄とステンレス」があります。
金属とマグネットの関係性として、
一般的には鉄はマグネットに付く、ステンレスはマグネットにつかないと認識されています。
この認識は鉄に関しては間違いありませんが、ステンレスに関しては必ずしもそうではないといえます。
なぜなら、ステンレスがマグネットにくっつく場合もあるからです。
ではどういったステンレスがマグネットにくっつくのでしょうか。
答えは2通りあります。
①元々マグネットにつく配合のステンレス
②元々マグネットにはつかないが、組成変化によってつくようになったステンレス
①から見ていきましょう。 ステンレスは合金です。
合金とは様々な素材を合わせた金属で、合わせる素材の配合によって金属を錆びにくくさせたり、
強度を増したりなど+αの付加価値をつけることができます。
つまり、一般的に「磁石につかない」ステンレスでも、
合わせる素材によっては「磁石につく」ステンレスもあるということです。
身近なものの例でいうと台所のステンレスシンクがあります。
こういったものだと生産ラインに入ってきたとしても、鉄と同様にマグネットで除去することができます。
本コラムで重要なポイントは②です。
ステンレスと一口に言っても、①でも触れたように素材配合によって様々な種類があります。
特に生産設備においては耐食性、強度、加工の容易さの面から
SUS304、SUS316という種類のステンレスがよく使われます。
これらのステンレスは基本的にはマグネットにつかないのですが、
切削や曲げ加工といった外部応力が加わることにより、マグネットにつきやすくなります。
専門用語でいうとオーステナイト系ステンレスのマルテンサイト変態といいます。
ただし、外部応力が加わったSUS304が、急に鉄のようにしっかりとマグネットにくっつくわけでなく、
吸着力としては弱いです。
生産ラインに異物として入ってくるものは、粉砕機や供給機、ポンプなどの回転体の摩耗粉が多く、
これらは上記の説明の通り、吸着力の弱い金属粉です。
ですので、こうした吸着力の弱い金属粉を除去するために、適したマグネットを選定する必要があります。
なお、生産ラインの異物除去でマグネットに全くつかない金属もあります。
銅やアルミなど磁性を持たないものです。
これらは生産ラインに混入してしまうと除去が難しいため、
そもそも混入しないようなプロセス設計が必要です。
①マグネット(磁石)で除去できるもの(←本ページ)
④マグネットをどこにつけるべきか?湿式と乾式はどちらが優位か?
⑥液体用マグフィルター⑵ 高磁力、高効率、ポット、P、ボールマグの使い分け
⑦粉体用マグフィルター⑴ 選定の基準、口径と処理量、ピッチの決定
⑧粉体用マグフィルター⑵ 前工程(投入方法)での除去効率の差異