近年、AI(人工知能)の進化により、半導体業界は急速に成長しています。
一方で、材料や製造プロセスにはこれまで以上に高い再現性が求められるようになりました。
特に粉体材料では、わずかな混合・分散の違いが品質や歩留まりに直結します。
本記事では、こうした課題に対してエイシンの装置がどのように役立つのかを交えながら、ラボ段階での「再現性の作り込み」について解説します。
本シリーズは「ラボ編」と「量産編」の2本立てでお届けします。
はじめに:量産で困る前に、ラボで「再現性」を作る
半導体向け材料(Si系粉体、AlN等)は、材料そのものの性能だけでなく「混ざり方/分散の状態/凝集」が少し変わるだけで、特性のばらつきや歩留まりに影響しやすい領域です。だからこそ、研究開発段階では“うまくできた1回”ではなく、誰がやっても同じ状態になる条件(再現性)を、設備と評価手順で作り込むことが重要になります。
ラボ工程の基本フロー(イメージ)
処方設計 → 溶媒・バインダー調製(スターラー) → 分散/粉砕(ボールミル) → 小型混合・評価(タンブラーラボ) → 量産条件へ、という流れが分かりやすいです。

1)スターラー:まず「液相」を安定させる(溶媒・バインダー・分散剤)
スラリー系・湿式系の試作では、粉体を入れる前に溶媒/バインダー/分散剤を安定させるだけで、後工程の“ダマ”や“ムラ”が減ることが多いです。スターラーは、構造がシンプルで洗浄性も高く、試作条件の振れを抑えるのに向きます。
ポイントは、ビーカーや容器が磁性体だと回転が不安定になるため、容器材質と底面形状を揃えること。粘度が高い場合はトルクのある機種が必要になります。

2)ボールミル:分散・粒度調整の“レンジ“を作る(ただし、コンタミ設計は先に決める)
ボールミルは、単なる粉砕機というより「分散状態・粒度分布のレンジを作る装置」として使えます。研究開発では、混合だけでは解けない凝集をほどいたり、粒度調整をしたりして、後段の混合評価を“比較可能”にします。ボールミルの基本構造と原理は、容器内で媒体(ボール)を衝突させて粉砕・分散するものです。
一方で、半導体材料ではコンタミ懸念が常にあるので、内張り等のコンタミ対策オプションも含めて設計するのが現実的です。(材料・目的により最適解が変わります)


3)タンブラーラボ:小型混合で「配合ムラ」を見える化し、量産へつなぐ
量産に移行するときに詰まりがちなのが、「ラボで作った処方が、量産で“再現”できない」問題です。タンブラーラボのような容器回転型の小型混合は、混合条件(時間、充填率、サンプリング)の標準化がしやすく、量産条件の当たりを付けるのに向きます。
実務的には、以下のように“手順を固定”すると、評価の比較ができます。
・かさ比重から必要容積を計算し、容器容量を選定
・充填率は目安として約60%
・サンプリング時間点(例:1,3,5,10分)を決めて、同じ採取位置で比較
・評価項目は、混合度、凝集、付着(壁残り)など

4)研究開発で設備検討担当者が見るべきチェックリスト
ラボの段階で、次を決めておくと量産検討が速くなります。
・「何を最重要にするか」:粒度?分散?混合ムラ?金属異物?
・「評価方法」:サンプリング箇所/混合指標/凝集の判定方法
・「洗浄・切替」:容器切替や清掃時間も条件の一部
・「量産に持っていく条件の粒度」:回転数や時間を“誰でも同じ”にできるか
まとめ:ラボは「設備の選定」ではなく「再現性の設計」
ラボでスターラー→ボールミル→タンブラーラボの役割を分けると、試作の偶然性が減り、量産設備の検討が一気に進みます。
ただし、量産に移行した後には新たな壁があります。異物クレーム・混合ムラ・ブリッジ(詰まり)です。
次回の量産編では、この3つを工程設計としてまとめて防ぐ考え方を解説します。
【参考】
「粉体(Si系/AlN等)の試作で、分散・混合・凝集評価の“手順ごと”相談したい」
「量産に繋がる条件出しを、短期間で進めたい」
→ 混合テスト手順ブログ: https://i-eishin.com/2021-0126/
執筆担当:杉原





