空気輸送ラインへのマグネット取付け挑戦記 ─ 検証データ全公開

今回は少し珍しいテーマをお届けします。「うまくいかなかった検証」の記録です。

「粉体用空気輸送(空送)ラインの配管外側にマグネットを取り付けて、輸送中に金属異物を除去できないか?」というテーマで、社内で実際に様々な条件を変えながら試験を重ねました。

結論からお伝えすると、最終的な除去効率は実用上の限界がある、という結果になりました。
うまくいかなかった内容も、その過程と実測値をそのままお見せすることが、同じ課題をお持ちのお客さまにとっても価値ある情報だと考えています。

マグネットの構成(外付け構造とは)

今回試みた構造のポイントは「配管の外側からマグネットを当てる」という点です。

一般的な粉体ライン向けマグネットフィルターは配管内部に挿入する「内挿型」が主流で、弊社でも液体用の高効率マグフィルターポット式マグフィルターなどを流用する場合もあるのですが、付着性の高い粉、凝集性の高い粉の空気輸送では、配管中に余分な突起などがあると、空気の流れが悪くなり、能力低下や閉塞の問題が発生します。よって、外付け構造での検証をしました。

 

📐 テスト構成について
配管サイズ別に 1S(1インチ)・2S(2インチ)・3S(3インチ) の3サイズを用意。それぞれ風速・マグネット種・配置方向・直列段数を変えながら評価しました。

空気輸送用マグネットの重要な選定条件

空気輸送ラインにマグネットを適用する際、単純に強力な磁石を置けばよいわけではありません。以下の5項目が複雑に絡み合います。

条件 内容 外付け構造での影響
① 風速 粒子の通過速度 速いと磁力が及ぶ時間が短くなり捕集率が低下
② 配管径 管の太さ 太いほど中心部に磁力が届きにくい
③ 磁力 磁石の吸引力 磁石の種類により特性が大きく異なる
④ 着磁距離 磁力が有効に働く距離 配管壁の厚みも影響するため内挿型より不利
⑤ 直列設置数 流れ方向への複数配置 1回で捕集しきれない異物を段階的に除去
⚠ 外付け構造ならではのハードル
外付けの場合は配管壁を隔てて磁力を働かせるため、着磁距離の影響が特に大きくなります。これが今回の検証で最も重要な制約条件となりました。

使用マグネットの特性:バーマグネット vs プレートマグネット

今回の検証では主に2種類のマグネットを使い分けました。それぞれの特性を理解することが、空送ラインへの適用を考える上で非常に重要です。

詳しくはバーマグネットとプレートマグネットの比較コラム(エイシンブログ)もご参照ください。

🔴 バーマグネット

磁力高い
着磁距離短い(集中型)
適した用途小径配管・管壁近くの異物除去
🔵 プレートマグネット

磁力低い
着磁距離長い(広域型)
適した用途大径配管・広範囲カバー

バーマグネットは磁力が集中するため管壁近くを流れる異物には有効ですが、管中心付近には磁力が届きにくい弱点があります。プレートマグネットは広い範囲に磁力が分散するため大径配管では有利ですが、磁力の絶対値が下がるというトレードオフがあります。

検証方法と実測データ全公開

評価方法

砂鉄を10g流し、マグネットで何グラム回収できたかを計測しました。
捕集率=回収量 ÷ 10g × 100(%)で評価しています。

1S 配管(小径)での結果

条件 風速(m/s) マグネット 配置 捕集率 評価
CP・ストレート 25 バー 上下 14%
CP・ストレート 25 バー 左右 49%
CP半開・ストレート 15 バー 上下 48%
CP半開・ストレート 15 バー 左右 88%
💡 1S配管からの知見
風速を25m/s → 15m/sに落とし、マグネット配置を「左右」にするだけで 14% → 88% と劇的に改善しました。「風速を落として直列にすると良い」という傾向がここで確認されました。

2S 配管(中径)での詳細結果

条件 風速(m/s) マグネット 配置 直列後段 形状 混合材 捕集率 評価
CP・基本 15 プレート 上下 砂鉄のみ 74〜79%
CP・両種 15 プレート+バー 上下左右 砂鉄のみ 80〜81%
ブロア40Hz 15 プレート+バー 上下左右 砂鉄のみ 82〜92%
ブロア40Hz・直列 15 プレート+バー 上下左右 上下左右 砂鉄のみ 92%
ブロア60Hz(標準) 22 プレート 上下左右 ストレート 砂鉄のみ 51〜58%
ブロア60Hz・チーズ 22 プレート 上下左右 チーズ 砂鉄のみ 88% / 2段目4%
対面反発・最良条件 22 プレート 対面反発 チーズ+ブラインド 砂鉄のみ 95% 最良

※CPはコンプレッサー+エジェクターで真空を作っていて、ブロアと動力源が異なります。
※対面反発は配管の反対側を反発するように組むかたちです。
※形状の行は説明が難しいのですが、配管の組み方と入れ方の差とご理解ください。
チーズ+ブラインドはチーズ継ぎ手の上から材料を入れて、吸引方向とは反対の出口はブラインドヘルールで閉じている形です。

3S 配管(大径)での結果

条件 風速(m/s) マグネット 配置 捕集率 備考
CP・低速 5.5 バー 上下左右 67〜68% 風速が遅く参考値
CP・低速 5.5 プレート 上下左右 93〜96% プレートマグネットが優位
2S→3S拡径部 85mm 7 プレート 上下左右 59% 拡径直後は流れが乱れる
2S→3S拡径部 200mm 7 プレート 上下左右 68% 多少改善するが限界あり
2S→3S 対面反発 7 プレート 対面反発 78% 配置変更で改善
⚠ 3S(大径)配管での課題
配管径が大きくなると管の中心部に届く磁力が不足します。拡径箇所(2S→3S)では流れが乱れ、さらに捕集が困難になりました。配管径は外付けマグネットを選定する上で特に制約が大きいパラメータです。

実用材料での検証結果(ペレット・酸化チタン)

砂鉄単体で最良の結果が得られた条件(2S・対面反発・チーズ+ブラインド・風速22m/s)を採用し、実際の輸送物を混ぜて最終検証を行いました。

混合材 配合比 捕集率 評価
砂鉄のみ(最良条件) 砂鉄100% 95% 基準値
ペレット+砂鉄 ペレット95g+砂鉄5g 68% 低下
酸化チタン+砂鉄 酸化チタン95g+砂鉄5g 50% 不可
95%
砂鉄単体の
最高捕集率
68%
ペレット混合時
(最良条件)
50%
酸化チタン混合時
(最良条件)
なぜ実用材料で捕集率が下がるのか
輸送物が一種のクッションとなり、砂鉄が管壁近くに分散しにくくなるためと考えられます。外付け構造では「管中心部の異物に磁力が届かない」という根本的な課題を回避できませんでした。

結論:空送ラインより「自由落下区間」での除去が有効

様々な条件を試した結果、空気輸送ライン途中の配管外側にマグネットを取り付けるアプローチには実用上の限界があるという結論に至りました。

その一方で、別途実施した自由落下区間(重力を利用した落下ライン)での検証では、砂鉄10gを1段のマグネットで99%捕集という圧倒的な結果が得られています。

✅ 学んだこと
「空気輸送ラインのどこかで除去したい」という場合、まず自由落下区間(ホッパー出口・タンク排出部など)にマグネットを設けるレイアウトを優先的に検討することを強くお勧めします。重力と磁力を同時に活用できる自由落下区間は、金属異物除去にとって最も効率的な環境です。
空気輸送機に直接つなげる磁選機の納入事例も、以下ブログで紹介しています。
【納入事例】空気輸送に直接つなげる磁選機 | エイシンブログ
自由落下対応マグネット製品ページを見る →

ちなみにもう一つ補足で、格子型マグフィルターを空気輸送など、自由落下以上の流れ(気流)がある中で、ご検討依頼をいただくことがあるのですが、出来る限り自由落下を推奨します。流れがあると、マグネットを避けるように気流ができるので、異物も気流に乗って避ける可能性が高くなるためです。

今回の検証で得た「うまくいかなかった条件データ」も、同様の構造を検討されているお客さまにとって「同じ道を辿らずに済む」有益な情報です。エイシンではこのような多角的な検討・試験結果も公開します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 空気輸送ラインの外側にマグネットを付けて異物除去はできますか?

A. 条件次第では一定の捕集は可能ですが、実用材料(ペレット・粉体)と混合した状態での除去効率は50〜68%にとどまり、実用上の限界があります。風速を下げ、マグネットを複数直列に配置することで改善しますが、配管径が大きくなるほど外付けでは管中心部への磁力が届きにくくなります。

Q2. バーマグネットとプレートマグネットはどちらが空送向きですか?

A. 小径配管では磁力が高いバーマグネットが優位ですが、大径配管では着磁距離が長いプレートマグネットの方が有効なケースもあります。今回の検証では3S配管で風速5.5m/s時にプレートマグネットが93〜96%の捕集率を記録しました。ただし実運用風速では両者とも効率が大きく低下します。

Q3. 空送ラインで金属異物除去をするには、どこに設置するのがベストですか?

A. 自由落下区間(ホッパー出口・タンク排出部・シュートなど)への設置が最も効率的です。重力と磁力を同時に活用でき、実際の検証で1段のマグネットにより砂鉄99%の捕集を達成しました。空送ライン上で除去が必要な場合も、自由落下区間を優先してレイアウトを検討されることをお勧めします。

Q4. 今回の検証で最も捕集率が高かった条件は何ですか?

A. 2S配管・風速22m/s・プレートマグネット対面反発配置・チーズ+ブラインド継手の組み合わせで砂鉄単体95%を達成しました。ただし同条件でペレットを混合すると68%、酸化チタン混合では50%まで低下しました。

空気輸送ラインの異物除去・マグネット選定でお悩みの方へ

今回のような検証データを基に、お客さまの設備・原料条件に合った最適なご提案をいたします。
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